今日は2025年10月26日付けの日経新聞朝刊から、中国と米国の分断に関する記事を取り上げたいと思います。

記事の要約
中国のスタートアップ業界において、海外ベンチャーキャピタル(VC)、特に米ドル建て投資の存在感が大きく低下しています。かつて約5割を占めていた米ドル建て調達比率は現在1割強にまで落ち込み、その穴を政府系マネーが埋める構図が鮮明になっています。背景には米中対立や中国政府による民間テック企業規制があり、海外投資のハードルが高まったことが影響しています。
一方で、AI・半導体・医薬など国家戦略分野への資金投下は続いており、政府支援型の「国策ユニコーン」誕生が加速。米国の投資制限がむしろ中国の自立化やイノベーションを促す面も見られます。
記事に至る経緯

2020年前後、中国政府は巨大テック企業に対する締め付けを強化し、国内の民間企業への規制が相次ぎました。同時に米国議会では、中国への投資を安全保障上の脅威として問題視する声が高まり、米VCは中国への投資縮小や組織分離を迫られました。その結果、中国スタートアップが海外から資金を得る難易度が上昇。
こうした資金調達環境の変化に対して、中国政府系ファンドや地方政府系資本が積極的に支援に回り、人民元建て資金による国内完結型の成長モデルが形成されつつあります。
見解

今回の動きは、中国のスタートアップエコシステムが「グローバル資本依存型」から「国家主導・自立型」へと転換している象徴と言えます。海外の資金や技術、ノウハウを活用しながら成長してきたフェーズから、政府主導で戦略分野に集中投資し、国内技術で競争力を築く方向性が強まっています。
短期的には、資金調達多様性の低下や政府依存による市場の硬直化が懸念されます。特に政府が重視しない領域のスタートアップは資金不足に陥るリスクがあります。一方で、AI・半導体など国家戦略領域では、強力な資金支援と政策後押しにより、米国の制限がむしろ国産技術開発を加速する可能性が高い点は見逃せません。
また、米中テクノロジー環境の分断は、両国企業間の相互依存を弱め、技術や資本が「二極化」していく未来を示唆しています。これは国際協調の観点ではマイナスですが、イノベーション競争という観点では新たな発火点となり得ます。
まとめ
中国のスタートアップ資金調達は、海外VC依存から政府系資本中心へと劇的なシフトを遂げています。米中対立による資本断絶は、中国の技術自立路線をさらに強化し、国策ユニコーンの誕生を後押しする流れに。今後は、国家主導のイノベーションがどこまで国際競争力を持ち得るのかが焦点となります。
世界が二極化する中、米国と中国のテクノロジー覇権争いは一層激化することが予想されますが、そのプロセスから生まれる新たな技術革新にも注目する必要があります。


コメント